紫色のクオリア,Steins;Gate - 読了

修論研究に就活となかなか安寧が得られない日々を送りつつあります.特に就活は……あまり積極的に動けてません>< やっぱり学生というある種,モラトリアムな期間から脱するのが嫌なんだろうな,俺.


それは置いておいて.


紫色のクオリア』読みました.きっかけは,
ゼロ年代を締めくくる傑作! 『Steins;Gate』シュタインズゲート - アセティック・シルバー
のネタバレ以前を読んで.ということで,シュタゲもクリアしました.まぁ,上にも書いたようにあまり余裕のある精神状態でプレイしたわけではないのが悔やまれる.もう一度通してプレイしたいなぁと思う次第です.

紫色のクオリア (電撃文庫)
Steins;Gate(シュタインズ・ゲート)(通常版)


これら2つの作品は確かに似ています.ループものとして.敢えて言うならやはりシュタゲはフィジカルあるいはサイエンティフィック,紫色のクオリアはメンタルあるいはフィロソフィカルな作品ではある.大まかなストーリーの流れも似ている.ともに,友人の死に際してその現実を認めたくないがゆえ,そしてその現実を変えられる力を手に入れたがゆえ,死の回避のために時間を越えて何度もトライ&エラーを繰り返すというループもの.

シュタゲは現実の物理学の学説の基づく『想定』により『なんか,ありそう』なSFではなく現実の延長としてScience non-Fictionの世界を描く.一方の紫色のクオリアは自分以外の人間が"ロボット"に見えるという紫色の瞳のヒロイン:毬井ゆかりに代表される『見え方』(正確に言うと『感じ方』),クオリアを主テーマに,物語の主人公(語り部):波濤マナブの視点を通してその物語が描かれる.何度繰り返しても回避されない友の死,SERNやジョウントといった敵対組織などなど,類似点こそあるとはいえ,根底にあるテーマは個人的には上リンクにあるような同一の判断基準では判断出来ないように思う.
その部分を引用させてもらうと:

まとめると、紫色のクオリアが『救われる側の人間の気持ちを無視した一方的な奉仕は所詮ナルシシズムにすぎない』という話だったのに対して、シュタインズゲートの方は『誰を救って誰を見捨てるなんてことは自分には(神ではない以上)選ぶことはできない』という点に留まっている、という違いですね。

むしろ,俺は深読みとか考察が苦手なので,上記引用部のような考察は考えつかなかったし,リンク先エントリのような深く,興味深い考察は出来ない.が,あえて俺が感じた両作品のテーマを述べるとしたらどのようにだろうか.

シュタゲは想定科学ADVとあるように,これはSFではなく想定され得るだろ?っていう話だと思った.つまり,タイムマシンを作ったりタイムリープしたりといったことは現在の科学から言うとなんか行けそう.だけど,やっぱりそこには親殺しのパラドクスやら何やらがあり,自在に時空を支配することなんて無理.その例として,身近な人の死を取り上げる.例えば親しい友人がいて,彼女が死ぬことになる.そしてその原因の一端が自分に関係することだった.タイムリープして何としてでも彼女を救いたい,が,何度繰り返しても彼女の死は回避されない.彼女の死を回避するためには別の世界線に行かなくてはならない.でないとアトラクタフィールドにより彼女の死を免れることは出来ない.そのためには世界が分岐した原因をつきつめないといけない.それはほんの些細な事かもしれない.『バタフライ効果という言葉を知っているか?』

この物語はタイムマシンやタイムリープへの憧れに対するアンチテーゼに主眼が置かれているように思う.人間は予定調和を嫌うとは最近プレイしているうみねこに出てきた言葉だったろうか.結局,どんな世界に分岐するかわからない世界がいいよねっていう話かとおもた.


そして,紫色のクオリアに関しては述べられている通り,クオリアのお話.人の感じ方って人それぞれだし,"人が『確定』し,『観測』できるのは,自分自身の運命のみ"――だってその人の見え方,感じ方なんてその人以外にわかるわけがないのだから.

「あたしの運命を変えられるのは――変えていいのは、あたしだけで、ガクちゃんに、そんな権利はないんだよ?」

マナブが繰り返しやり直した末,最終的に気付く――というより気付かされる認識.


個人的には紫色のクオリアは分量的にもう少しあっても良いかなと思った.確かに後半の怒涛の勢いは読者を没頭させ一気に読ませる疾走感があってグッドだけど,マナブの幾多ものやり直しが装飾というか肉付けのない事実描写のみなのがもったいない気がする.読者にもうループは勘弁して,というその絶妙な瀬戸際までやり直した末の結論という展開もアリだったのかもしれない.まぁでもこれはこれで良かったと言えばそれまでだけれども.

そして最後に言いたい.タイムリープものでありかつ百合要素を取り入れた上でこれだけの深いテーマを見事書いたラノベに出会えたことに最大の感謝を!

正直,百合萌えな俺には,たまらんわ*1



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4 後半は圧巻
5 主人公は家庭教師リボーンのボスでした(;'Д`)ハアハア

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5 ストーリ、脚本、演出の何れもが半端無く作り込まれた奇跡のようなアドベンチャゲーム
5 思い切って買って良かった
5 初めて、ゲームで泣きました
5 いい話だった。
2 言うほど面白くない

*1:百合要素はそれほど多くはないけれど,こういった深淵なテーマに百合っていうのがもうね(ry