プリズム - 読了

下記で紹介されていたので読んでみました。


『うみねこのなく頃に』好きにオススメのミステリ小説 - 三軒茶屋 別館


普段読まない類の小説だったので(というか本自体たくさん読んでるかというと微妙だけれども...)ちゃんと読めるか心配だったが、面白く読めました!


プリズム (創元推理文庫)


確かに紹介されている通り、うみねこ好きには楽しめる一冊だったと思います。
いや、『うみねこ』というよりは『ひぐらし』好きのほうが適切かもしれない。


特にミステリファンというわけではないので、『〜の流れを汲んだ』とかだとしても元ネタ分からないし、そういった意味では十二分に楽しめてないのかもしれないが(後日機会があれば『毒入り――』を読んでみよう)、十分楽しく読めました。というより、本書の性質上、どれだけ楽しめるかは読者の想像に委ねられる部分もあるわけですが。


以下、ネタバレ含む。


事の次第は単純で、『小学校の美人先生が殺された』事件の犯行推理と犯人探し。
本書は4つのパートに分かれており、それぞれ視点が異なる。

  • 虚飾の仮面 では、被害者の担当するクラスの男の子。
  • 仮面の裏側 では、被害者の同僚。
  • 裏側の感情 では、被害者と以前付き合っていた男
  • 感情の虚飾 では、Scene 1の男の子の父親で、被害者とは不倫関係

それぞれのパートでそれぞれの視点から事件の推理を行うといった形式。
この辺は『ひぐらし出題編』のオヤシロさまor人間による犯行の推理をするステージに鬼隠し・綿流し・祟殺し・暇潰しがあるあたり相似形であると言える。


ひぐらし』の方がどうだったかよく覚えていないが、『プリズム』ではSceneが進むごとに前のSceneでの推理が否定されるような新しい事実が知らされることになる。前のSceneでの推理はそれで完結しているように読者に思わせ、次のSceneで新たな視点に立つことで知らされる事実によって実は他の推理が可能なのではないかという可能性を提示する。題材としてはありふれた殺人事件だが、マルチサイトでの推理が犯行の可能性を視点の数だけ増加させる点が面白い。


本書末尾の解説にも書かれているが、各Scene、視点によって被害者の人物像が変わるのも面白い。各視点での推理も必ずしも犯人当てが目的ではなく、『自分がなっとくのいくまで』推理するといった形をとっており、またマルチサイトで書かれているため地の文もいわゆる『神の視点』から書かれた絶対的事実ではなく、当人の主観によってなりたっており、結局誰が犯人?といった絶対的事実は最後まで明かされない。読者にお任せします、といった形で終わる。この点『ひぐらし出題編』も同じような構成になっている。


もっとも、ひぐらしには『解決編』があるわけだけれども。


うみねこ』で似ているかどうかで言ったら、確かに同種といえるかもしれない。
うみねこでは各Episodeごとに六軒島大量殺人事件が魔女による仕業or人間による犯行をベアトリーチェと推理をバトルさせる展開をとっているが、各Episodeごとに殺され方やバトルのルールの仔細が変わったりする。この点マルチサイトとは言えないが、推理するための新たな材料が提供されるあたりに同様の効果があり、目指す方向性は似ているような気もする。


『真実はいつもひとつ』に象徴されるようないわゆるミステリーが本書という『プリズム』を通すことでそれぞれの視点という色のスペクトルへと分散され異なった帰結を結ぶ。ラノベのような平易な文章でカワユス娘が出てこない小説は読めないという先入観があったが、そんなものは関係なくのめり込むように読めた一冊でした。


まぁ、本書には『美人小学校教師』←わがまま、女王様系、ワールドイズマインな感じ――をはじめ、美少女小学生も登場してるわけだが。


蛇足だけれども。


プリズム (創元推理文庫)
貫井 徳郎
東京創元社
売り上げランキング: 84238
おすすめ度の平均: 3.5
4 結末なき結末とでもいうのか
5 『慟哭』から派生した新機軸の小説です。
3 藪の中
3 消化不良
4 驚いた

P.S.

本当は今年中にあと何冊か感想をまとめようと思っていたが、ちょっと無理そう。
来年またぐかもしれないorz覚えていられるかな……。
というわけで、年末は何もせずにぼーとしています。で手持ち無沙汰感が増すと本を手に取るとかゲームをするという自堕落。
何か駄目人間だなと思いながらも倦怠感に勝てない。
本当は勉強とかしようと思っていたのに。
明日には今年のこととかまとめられるといいかなと。
きっと明日には郷里(くに)に帰るだろうし、ネット使えなくなるし、というかアニソン三昧聞けるのか俺という不安を抱えているわけだが。
まぁ帰っても暇しないように小説を何冊か買い込んだわけだけれども。